乳幼児の加熱式たばこ誤飲が100件超えーーアイコス、グロー、プルームの事故事例と対処方法

加熱式たばこスティックを誤飲する事故が、2017年以降の6年間で112件発生したーー

乳幼児による加熱式たばこの誤飲に注意するように、国民生活センターが呼びかけています。

同センターによれば、床に落ちているたばこスティックだけでなく、机の上にあるたばこや、ゴミ箱に捨てた吸い殻を誤飲するケースも多いといい、使用前後のスティック等は乳幼児の手の届かないところに保管・廃棄するように推奨しています。

この記事では、国民生活センターが発表する資料をもとに、加熱式たばこスティックの誤飲事故についてどのような事例があるのか、防ぐ方法や飲み込んでしまった場合の対処方法をまとめます。

アイコスさん

監修者

Twitter:@iqossan
2016年より運営している加熱式たばこメディア「アイコスさん」代表。IQOS歴は7年。gloとPloom歴は6年。加熱式たばこデバイス所持数は100台を超える。
JT本社に取材、IQOSストア銀座店のオープン初日に取材など、加熱式たばこをはじめとした「新型たばこ」の情報を、正しくわかりやすく伝えることを心がける。月間最高PV数は400万。

目次

6年間の乳幼児の加熱式たばこ誤飲事故は112件にのぼる

医療機関ネットワークには、6歳未満の乳幼児がスティック等を誤飲したという事故情報が、2017年度以降の約6年間に112件寄せられたといいます。

国民生活センターでは、2017年に加熱式たばこのたばこ葉の入ったスティックやカプセルの誤飲事故について注意喚起を行ってきたそうですが、その後も同種の事故が後を絶たないといいます。

アイコス・プルーム・グロー・リルハイブリッド全ての銘柄で事故が発生しうる

同センターでは、2022年10月時点で、国内で販売されていたスティック等のうち、アイコス、プルーム、グロー、リルハイブリッド専用たばこを含む計16銘柄をテスト対象とし、乳幼児の口に入るのかテストしたといいます。

その結果、テスト対象銘柄の半数はそのままで3歳未満の乳幼児の口腔内に収まるサイズで、残りの半数でも噛んでしまうと口腔内に収まることが分かりました。

乳幼児が誤飲するかテストした銘柄一覧
乳幼児が誤飲するかテストした銘柄一覧(国民生活センター報道資料より引用)
いずれの加熱式たばこ専用スティック・カプセルも、乳幼児の口腔内に入ってしまう可能性があることが判明。
いずれの加熱式たばこ専用スティック・カプセルも、乳幼児の口腔内に入ってしまう可能性があることが判明。(国民生活センター報道資料より引用)

金属片内蔵スティックの誤飲事故も発生

加熱式たばこは、たばこのスティックを電気的に加熱し、霧状のニコチンを吸入する製品で、近年売り上げが伸びています。

近年新たに発売された、誘熱体として金属片が内蔵された加熱式たばこのスティックを誤飲したという事故も発生していることが報じられています。

実際に、フィリップモリスジャパンが販売する加熱式たばこアイコスイルマの専用たばこスティック「センティア」を分解してみました。中には熱誘導のための金属片が含まれていることがわかります。

「センティア フロスト グリーン」を分解したところ。たばこ葉の中には熱誘導のための金属片が内包されていた。
アイコスイルマ専用スティックを分解したところ。たばこ葉の中には熱誘導のための金属片が内包されていた。(筆者撮影・作成)

加熱式たばこスティックを誤飲した11の事例

国民生活センターによれば、様々なケースの誤飲事故が発生しているといいます。

事例①:0歳児が本体に挿したまま置かれていた吸い殻を誤飲し嘔吐、金属片を胃内に認めた

子どもが茶色いものを嘔吐おうとし、涙目になっていることに気付いた。吸い口は折れて吐き出してあり、たばこ葉の入った部分はぐちゃぐちゃに吐き出してあった。父親は、吸い終わったたばこを本体に挿したままソファの座面に置いていたとのことであり、子どもが本体から抜いて口に入れたと思われる。
金属片がなくなっていることに気付き、顔色が真っ青になっていたため緊急外来を受診。レントゲンで胃内に金属片を認めた。経過観察後帰宅。金属片は翌朝自然排出された。なお、母親は金属片が入っていることは知らなかったようである。
(受診年月:2022 年6月、10カ月・男児)
胃内に金属片が確認できた腹部エックス線写真(国民生活センター報道資料より引用)
胃内に金属片が確認できた腹部エックス線写真(国民生活センター報道資料より引用)

事例②:0歳児がわずかな間に、ごみ箱に捨ててあった吸い殻を口に入れてしまった

保護者が洗濯している間、子どもを部屋にわずかな時間ひとりで待たせていたところ、ごみ箱に捨ててあった加熱式たばこの吸い殻をつかみ口に入れていた。すぐに口の中の吸い殻は出したが、心配になったため受診した。
(受診年月:2022年4月、10カ月・男児)

事例③:0歳児が加熱式たばこのスティックを口にして、たばこ葉の部分がなくなっていた

子どもが加熱式たばこのスティックを口にして、たばこ葉の部分がなくなっていた。吐き気があるようで受診した。胃洗浄を行い、1時間ほど外来で経過観察し状態は落ちついたため、帰宅した。
(受診年月:2021年10月、9カ月・男児)

事例④:2歳児が加熱式たばこの吸い殻が入った飲み残しの飲料を子どもが飲んでしまった

保護者が飲み残した飲料が入ったカップに加熱式たばこの吸い殻を入れたものを子どもが飲んでしまった。誤飲した後はむせて、飲んだものを吐いたが、心配になり2時間後に受診し、経過観察を行った。
(受診年月:2021年9月、2歳5カ月・男児)

事例⑤:0歳児がごみ袋から加熱式たばこの吸い殻を取り出してかじっていた

母親とキッチンにいた子どもが、床にあった開いたままのごみ袋から加熱式たばこの吸い殻を取り出して、1.5 ㎝程度かじっていた。父親が喫煙者で、いつも吸い殻をそのままごみ袋に捨てていた。嘔吐などはなかったが、4時間ほど経過観察し、翌日、状態の確認のため再受診した。
(受診年月:2018年4月、11カ月・女児)

事例⑥:0歳児がこたつの上に置かれていた灰皿の吸い殻を誤飲して1日入院

普段はこたつの中央に置いてある灰皿を、保護者がこたつの端に寄せた際に手を伸ばして中の吸い殻を子どもが誤飲してしまった。内部に金属片を内蔵しているもので、腹部レントゲンで胃内に金属片を認めた。吐き気をもよおし、ニコチン中毒症状出現のおそれがあったため、胃洗浄を実施。胃管からの吸引物に血液が混じっており、金属片による粘膜損傷が疑われた。ニコチン中毒症状のため、1日入院。金属片は退院後に自然排出された。
(事故発生年月:2022 年2月、7カ月・男児)

事例⑦:0歳児が保護者のかばんの中の吸い殻を誤飲して腹部レントゲンで金属片を認めた

保護者が、外箱に入れ、かばんの中にしまっていた加熱式たばこの吸い殻を子どもが誤飲。救急外来を受診した。内部に金属片が入っているもので、腹部レントゲンで胃の中に金属片を認めた。誤飲した金属片の形状から、腸管損傷のリスクは高くないと判断。年齢も考慮し、無理な処置は行わず経過観察とした。金属片は1週間後に自然排出された。
(事故発生年月:2021 年 11 月、11 カ月・女児)

事例⑧:1歳児がいつの間にか加熱式たばこを口に入れていた

父親の加熱式たばこの葉っぱの入っている部分全部を口の中に入れていたのに気がついた。急いで手で取りだした。その後普通にしていたので経過を見ていたが、1 時間後あたりからグッタリ、フラフラするようになったのでたばこのせいと思い、救急要請した。
(医療機関ネットワーク、受診年月:2017 年 6 月、女児、1 歳 0 カ月)

事例⑨:1歳児がごみ箱の中の加熱式たばこを舐めていた

昼食を食べ、母がデザートを準備していた隙に父の部屋に行き、ごみ箱にあった加熱式たばこをなめていた。色はなめていたせいか茶色に変色し、中身は十分に保たれていた。母が見たときには、たばこは口の中ではなく、手に持っていた。すぐに母親が救急車を要請した。患児の状態が落ち着いており、帰宅として経過観察となる。
(医療機関ネットワーク、受診年月:2016 年 12 月、男児、1 歳 0 カ月)

事例⑩:0歳児が加熱式たばこの吸い殻を口に入れていた

父の加熱式たばこの吸い殻を割って口に入れていたところを父が発見した。すぐに口からかき出した。
(医療機関ネットワーク、受診年月:2016 年 12 月、男児、9 カ月)

事例⑪:1歳児が加熱式たばこを食べて嘔吐した

口から加熱式たばこの葉を出しているのに母親が気づいた。加熱式たばこは 2cm くらい食べられていた。直後にたばこの葉と茶褐色の内容物を嘔吐、心配になり受診。受診時は機嫌よく、呼吸異常なし。
(医療機関ネットワーク、受診年月:2016 年 9 月、男児、1 歳 3 カ月)

加熱式たばこスティックの誤飲事故を防ぐために

加熱式たばこの使用前の 1 本分のたばこ葉中には、中毒症状が現れるおそれのある量のニコチンが含まれています。

使用前後のたばこ葉の入ったスティック等は、乳幼児の手が届かない場所に保管・廃棄するようにしましょう。

加熱式たばこスティック・カプセルは子どもの口に入ってしまうサイズ

事故情報には、乳幼児がフィルターやたばこ葉部分をかじった、食べたという事例が多くあります。

加熱式たばこのスティック等には乳幼児の口腔内に容易に収まるサイズのものがあり、その使用前のたばこ葉中には、1 本分で嘔吐を引き起こすおそれがある量のニコチンが含まれています。

加熱式たばこスティック・カプセルのサイズは、いずれも子どもが誤飲しうる形状とサイズである(国民生活センター報道資料より引用)
加熱式たばこスティック・カプセルのサイズは、いずれも子どもが誤飲しうる形状とサイズである(国民生活センター報道資料より引用)

加熱式たばこスティック等は、乳幼児の手や目が届かない場所に保管・廃棄するようにしましょう

乳幼児が加熱式たばこを誤飲したという事故情報が多く寄せられています。テーブル・机の上に置いていたものを誤飲した事例が最も多く、次に、ごみ箱等に捨てられていた吸い殻を誤飲した事例が多くありました。

使用前後のスティック等は乳幼児の手が届かない場所に保管し、乳幼児の見えないところに廃棄しましょう。

なお、子どもの手が届く範囲は、1歳児では台の高さが 50㎝の場合、台の手前から 40 ㎝までとされています

誤飲だけではなく、受動喫煙が生じる可能性もありますので、乳幼児がいる環境では喫煙を控えることも検討しましょう。

子どもの手の届く範囲に加熱式たばこを置くのをやめましょう(図は国民生活センター報道資料より引用)
子どもの手の届く範囲の目安(図は国民生活センター報道資料より引用)

また、液体の入った空き缶などに使用後のスティック等を廃棄すると、液体にニコチンが溶け出し、それを飲んでしまったときに吸収されやすくなるため特に危険です。液体の入った空き缶などに使用後のスティック等を廃棄するのはやめましょう。

加熱式たばこスティックを誤飲してしまった場合の対処方法

もしも、乳幼児が加熱式たばこのスティック等を誤飲した場合には、「水や牛乳などを飲ませず、直ちに医療機関を受診しましょう」と国民生活センターは発表しています。

もし、乳幼児が加熱式たばこのスティック等を口に入れてしまったり、食べたり、飲み込んでしまったら、口の中にたばこ葉がある場合にはかき出し、水や牛乳などを飲ませずに、直ちに医療機関を受診しましょう。

水や牛乳などを飲ませると、水分にニコチンが溶け出し、かえってニコチンが吸収されやすくなってしまいます。

専門家のコメント:国立研究開発法人国立成育医療研究センター 救急診療科 診療部長 植松悟子先生

国民生活センターが発表した「なくならない乳幼児による加熱式たばこの誤飲に注意」では、国立研究開発法人国立成育医療研究センター植松悟子先生が以下のようにコメントしています。

加熱式たばこも紙巻たばこも乳幼児が誤飲した場合、ニコチン中毒のリスクに違いはありません。

近年、たばこを誤飲して医療機関を受診する乳幼児のエックス線検査をしなくてはならないケースが発生しています。誤飲した加熱式たばこのスティックに金属片を内蔵したタイプのものがあり、金属片を誤飲していないかを確認する必要があるからです。金属片の体内における位置によっては、エックス線検査では見つかりにくい場合があることも指摘されています。

加熱式たばこを誤飲したときに内蔵の金属片が口の中やのどを傷つけるおそれだけではなく、消化管等を傷つけるおそれがあります。乳幼児がいるご家庭などに喫煙者がいる場合は、日頃から、どのようなタイプのたばこを吸っているのか、喫煙者だけではなく、周囲の方も把握しておき、たばこを誤飲したと思われる場合、医療機関にどのようなたばこを誤飲したのか伝えましょう。

大人が注意することで、乳幼児の加熱式たばこ誤飲事故を防ごう

アイコスイルマ テリア の誤飲注意表記

加熱式たばこは大人が利用するものですが、その結果子どもが被害を受けるケースが相次いでいます。どのような誤飲事故の事例があるのか今一度確かめ、私達大人がこういった事故を未然に防ぐよう努めていきましょう。

より詳細な資料は、国民生活センターが発行する各種PDFにまとめられています。最後に同センターの注意喚起リンクをまとめておきますので、今一度、加熱式たばこ利用者は資料に目を通しておくようにしましょう。