フィリップモリスCEOが語ったアイコス生産計画とSDGs【Bloombergインタビュー解説】

PMIの社長がインタビューを受けた

2022年2月、フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)の最高経営責任者であるヤツェク・オルチャク氏が、アメリカの大手総合情報サービス会社であるブルームバーグのインタビューを受けました。

このインタビューでは、PMIが感じる「インフレ圧力」、「アイコス生産計画」、「特許権紛争」に関する見解、そして「SDGs」に対する想いをCEOが語っています。インタビューは全て英語で行われていますが、この記事ではそれぞれを日本語で解説していきます。

アイコスさん

監修者

Twitter:@iqossan
2016年より運営している加熱式たばこメディア「アイコスさん」代表。IQOS歴は7年。gloとPloom歴は6年。加熱式たばこデバイス所持数は100台を超える。
JT本社に取材、IQOSストア銀座店のオープン初日に取材など、加熱式たばこをはじめとした「新型たばこ」の情報を、正しくわかりやすく伝えることを心がける。月間最高PV数は400万。

インフレがたばこ業界に与える影響

フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)の最高経営責任者であるヤツェク・オルチャクCEO
フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)の最高経営責任者であるヤツェク・オルチャクCEO

現在、世界全体…特にアメリカではインフレ率が上昇傾向にあります。

2021年12月、アメリカにおけるインフレ率は、前年同月と比較して7%も上昇しました。これは、実に1982年以来の高インフレです。日本では物価が上がる「インフレ」の波がまだ大きく押し寄せていませんが、アメリカではすでにガソリン代などエネルギー関連の物価が特に高騰しています。

このインフレの波、そして影響はタバコ業界にも押し寄せており、ヤツェク・オルチャクCEOは、このインフレ圧力は長く続かないと述べつつも、インフレの影響によってタバコ製造にかかるコストが高騰することを懸念しています。

また、インフレ圧力の持続については、2023年までに終息しているとの見解を述べました。

アイコスの米国内生産を2023年に再開

アイコスの米国内生産についても語った。
アイコスの米国内生産についても語った。

2021年9月、国際貿易委員会(ITC)は、フィリップ・モリス・インターナショナルと同社のパートナー会社であるアルトリア・グループに対して、PMIの自社製品である「IQOS(アイコス)」をアメリカで輸入・販売することを禁じました。

これは、アイコスがブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の子会社であるレイノルズ・アメリカン社の特許を侵害していると判断されたためです。

BATといえば加熱式たばこ「glo(グロー)」でおなじみですが、実はこの特許侵害の影響で、PMIが再びアメリカでアイコスを販売するためには、アイコスを米国内で生産するか、デザインを変更するかの二択となっています。

そのため、ヤツェク・オルチャク氏は、アメリカでのアイコス国内生産の実現を計画しています。

具体的には、生産に必要な原材料を2023年3月までに確保し、2024年には、製品の状態、質、生産の稼働状況を整えると掲げています。

ブリティッシュ・アメリカン・タバコとの特許権紛争への対処

BATとPMIの特許紛争問題についても指摘が入る。
BATとPMIの特許紛争問題についても指摘が入る。

2021年9月に国際貿易委員会が下した判決により、PMIは、アイコスをアメリカに輸入・販売できなくなってしまいました。

しかし、2022年2月時点でも特許侵害における企業間の紛争は続いており、PMI側にも未だ勝算の余地が残っています。

PMIは、知的財産権の侵害にあたるとされる特許の1つに対し、自社が特許権を保有しているとして米国特許庁に申請しました。

しかし、BAT側の上訴が予想されるため、特許権紛争問題を解決するためには時間を要すると考えられます。

判決が下されるまでの間、PMIは、何らかの手段でアイコスをアメリカの消費者に提供する対処法を考えなければなりません。

製品をアメリカ国内で生産することは以前より検討されていましたが、国際貿易委員会が下した判決により、アイコスを現地で生産・販売することがより現実的になってきたのです。

パートナー会社であるアルトリア・グループとの関係は?

フィリップモリスインターナショナルの本社
フィリップモリスインターナショナルの本社

しかしながら、アメリカのパートナー会社であるアルトリア・グループは、フィリップ・モリス・インターナショナルと意見の相違がある旨を発表しました。

体的には、アイコスの販売目標の達成と契約についてです。契約の解釈や契約独占期間に関し、特定の業績基準がどのような影響を与えるのかを現在双方が話し合っています。

フィリップ・モリス・インターナショナルとしては、アルトリア・グループとあくまで友好的に和解することを目標としています。そのためにも、アイコスをアメリカ国内で製造することが企業として重要な課題となっているのです。

高インフレがフィリップ・モリス・インターナショナルの株価に与える影響

株価の上昇が続いているフィリップモリスインターナショナル
株価の上昇が続いているフィリップモリスインターナショナル

現在、インフレ上昇に伴いフィリップ・モリス・インターナショナルの株価も上昇しています。

しかし、このまま高インフレが進んだ場合、タバコの原料の価格も高騰し、PMIも収益を生み出しにくくなってしまいます。

高インフレの中で収益を増やすためにも、PMIは、タバコの金額を高額に設定し直さなければなりません。価格設定のことも含めて、株価に与える影響も今後観察していく必要があります。

また、ヤツェク・オルチャク氏は、違法な不正取引についても懸念しています。

ヨーロッパでは、高い税率をすり抜けるためにタバコの違法な取引がされており、全体の約30%のタバコがこれに当たるとされています。違法取引の取り締まりができない場合、フィリップ・モリス・インターナショナルの収益に悪影響を与えるだけでなく、税金を回収する政府にも打撃があるのです。

今後の配当方針について

フィリップ・モリス・インターナショナルの配当は、4.7%となっています。実に、年間約3.5%の成長率となっており、フィリップ・モリス・インターナショナルはもちろん、パートナー会社であるアルトリア・グループの株主にとっても高配当を期待できます。

今後の配当率の方針として、フィリップ・モリス・インターナショナルは、75%の配当率を目標にしています。また、利益を株主へ適切に分配するため、自社株買いプログラムなども実施しています。

フィリップ・モリス・インターナショナルは、前年同期比で配当金を増配していることから、株主や投資家の視点から見て、非常に魅力のある会社となっています。

フィリップ・モリス・インターナショナルとSDGsについて

SDGs / ESG観点からも、喫煙の代替手段の確保ついてフィリップモリスインターナショナルは注力していくことを力強く説いていた。
SDGs / ESG観点からも、喫煙の代替手段の確保ついてフィリップモリスインターナショナルは注力していくことを力強く説いていた。

株価について市場から注目を浴びているフィリップ・モリス・インターナショナルは、SDGsについても高い水準を掲げなければなりません。

「SDGs」とは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことを意味し、持続可能な社会の実現に向けた世界共通の目標です。

そして、その手法として「ESG」も注目されていますが、こちらは企業の総合的な誠実度を評価する基準であり、それぞれのアルファベットは以下の省略となっています。

・Environment(環境)
・Social(社会)
・Governance(企業統治)

これらSDGs、そしてESGの3つの要因のバランスを保つことで、持続性の高い社会に貢献できる企業と認められます。

そしてもちろん、PMIにとっても「SDGs」と「ESG」の概念は重要です。

フィリップ・モリス・インターナショナルが製造・販売している可燃性タバコは、私たちの体に悪影響を及ぼします。しかし、企業側が注意喚起を施しても、消費者の中には完全に喫煙をやめられない層も存在します。そういった消費者のためにも、可燃性タバコの代わりとなる手段が必要です。

ヤツェク・オルチャク氏は、科学と技術が発達した現代において、喫煙よりも悪影響の少ない代替品を広く供給できると考えています。

そして、ESGの観点から、環境、労働力、従業員、企業統治に関しても意識する必要があります。

フィリップ・モリス・インターナショナルのサステナビリティレポート(持続可能な社会を実現するための企業活動をまとめた報告書)は、業界内でもトップレベルを誇っており、高いESG水準とされています。

フィリップモリスインターナショナルのSDGs

 

未だ製品に関するさまざまな問題を抱えてはいるものの、フィリップ・モリス・インターナショナルは、あらゆる面で持続可能なビジネスを構築しているのです。

Philip Morris CEO on IQOS Production, Pricing, Dividend

PMI – Sustainable Development Goals (SDGs) index