【記者会見】BATは紙巻たばこから撤退しない グローメーカーのフィリップモリスと異なるタバコ戦略

グロー、BATのタバコ戦略

2020年11月4日、加熱式たばこ「グロー」のメーカーであるBATがオンライン記者会見を行いました。

内容は、『gloに関する科学的評価とBATの企業戦略「A Better Tomorrow(より良い明日)」』というもので、グローの健康リスク低減が科学的に証明された旨が発表されました。

記者会見の内容自体、非常に興味深いものでした。しかし、より興味深いことが記者会見終了後の質疑応答での、アイコスさんの質問で発覚しました。その旨を、他社とも比較しながらお伝えしたいと思います。

加熱式たばこ「グロー」のリスク低減が証明された

加熱式たばこユーザーにとって、「glo」にはどんな印象があるでしょう。よりタバコらしい味わいが愉しめる。安さが際立っている。など、消費者ニーズを突き詰めている印象が強い方も多いと思います。

しかし、加熱式たばこで気になることとして重大なことがあります。それは「健康リスク」です。

この健康リスクについて、グローのメーカーであるBATは、「この種の分野では初」となる1年にわたる長期臨床試験でのリスク評価を行ったそうです。

「この種の分野では初」となるBATの長期臨床試験でのgloのリスク評価(記者会見資料より)

「この種の分野では初」となるBATの長期臨床試験でのgloのリスク評価(記者会見資料より)

この調査にあたっては、BAT独自のマーカーを使用し、加熱式たばこを利用しているユーザーが紙巻たばこを利用してしまうという問題を完全に排除することで、この臨床試験をやり遂げることが出来たと発表していました。

実は24%の被験者が、期間中に紙巻たばこを併用していた。しかし、独自のマーカーを利用することでこの問題を克服したという(記者会見資料より)

実は24%の被験者が、期間中に紙巻たばこを併用していた。しかし、独自のマーカーを利用することでこの問題を克服したという(記者会見資料より)

その試験の結果、gloに完全に切り替えた被験者は、曝露量が禁煙被験者とほぼ同水準まで減少したそうです。更に、「炎症」「酸化ストレス」「心機能」「肺機能」「発がん」に与える影響も、禁煙と比較しても非常に近いものになった結果が出たそうです。

gloに完全に切り替えた被験者は、曝露量が禁煙被験者とほぼ同水準まで減少

gloに完全に切り替えた被験者は、曝露量が禁煙被験者とほぼ同水準まで減少

gloに切り替えた被験者のリスクマーカー反応の変化は、有意な基準値を超え、禁煙に近い

gloに切り替えた被験者のリスクマーカー反応の変化は、有意な基準値を超え、禁煙に近い

消費者としては「おお、そうなんだ」という反応があることかと思います。もしくは「まだ証明されてなかったの?」と思う方も多いでしょう。いずれにせよ、gloの健康リスク低減は長期臨床試験の結果、証明されました。

しかし、BATは紙巻たばこから撤退しない

この発表を聞いて思ったのは、以下のようなことです。

つまり、こんな発表するってことは、、BATも紙巻たばこから撤退するのか?!

アイコスさん

なぜこう思ったかというと、実はフィリップモリスが数年前に紙巻たばこから撤退するという発表を行っているからです。

フィリップモリスが紙巻タバコから撤退表明!?アイコスだけの世界へ フィリップモリスが紙巻タバコから撤退表明!?アイコスだけの世界へ

この発表は2016年に行われたものです。この事実を知っているので、ついにBATもそういう道を選ぶのか・・まで思いました。

・・・しかし、発表の最後までその旨の発表はありませんでした。

よって、どうしても気になったので、質疑応答の時間にて聞かせて頂きました。

BATのジェームズ山中氏と辻了介氏に質問させていただきました(画面にはブラーを付与しています)

BATのジェームズ山中氏と辻了介氏に、オンライン上で質問させていただきました(画像にはブラーを付与しています)

アイコスさん(私)が質問した内容は以下の通り。

「フィリップモリスが紙巻たばこから撤退する」という話もありますが、今回の発表なども受けて、BATも今後紙巻たばこから撤退するといった意向はあるのでしょうか?

それに対して、ジェームズ山中氏が回答下さいました。

たしかに我々の方針は、フィリップモリスと違う箇所があります。それは違うアプローチをとっているからです。

もちろん、今回の発表のようにお客様の健康リスクを低減したいが、我々が主導権をとるわけではなく、お客様に選択してもらいたいと思っています。

その結果、加熱式たばこをはじめ、紙巻きたばこ、オーラルたばこ製品、ベイパー製品など、様々が製品があります。それをお客様に選択して欲しい。

「消費者の選択を優先する」という考え方

ジェームズ山中社長のお話で印象的だったのは「消費者の選択を優先する」という考え方です。

これを聞いて なるほど と思いました。

正直、個人的にはここまで大々的に発表するからには、BATという会社の大きな方向転換などがあると期待していました。しかし、あくまでユーザーのことを考えたらこの考え方もありなのか。と思ったのです。

おそらく今、「ユーザーのことを考えたタバコ戦略」でいえば、大きく2つの考え方(選択肢)があると思います。

  1. ユーザーのことを考えるのであれば、有害なもの(≒ 紙巻たばこ)は排他し、より健康リスクが低い製品だけをメーカーは販売するべき
  2. ユーザーのことを考えるのであれば、選択はユーザーに委ね、仮に健康リスクがあろうともそれは消費者が欲しいと思って選ぶものであり、メーカーは制限しない

①は、ユーザーの健康を第一に捉えた良好な判断のように写りますが、よりドラスティックな選択になります。しかし、メーカーの利益を確保しつつ、健康リスクを徹底的に減らすことを鑑みるならば、選択できる選択肢です。これをフィリップモリスは選択しました。

②は、いわばユーザー任せではありますが、実はユーザーのことを考えているかもしれません。メーカーの利益を確保しつつ、ユーザーの自由を尊重することを鑑みるならば、この選択肢となります。これをBATは選択した結果となります。

BATとJTの考え方は近しい

実は、この考え方はJTも近しい考え方を持っています。以前、JTにプルームテックはじめ今後のたばこ戦略について取材に行った際に、ユーザーに選択肢を与えることを意識しているという旨を伺いました。

JT本社に直撃取材!プルームテックの良いところ悪いところを聞いてきた JT本社に直撃取材!プルームテックの良いところ悪いところを聞いてきた

つまり、(細かい差異は色々とありますが)BATとJTの考え方は大きくは近しいことになります。

メーカーが主導権を握ることをせず、ユーザーの選択を尊重したい。

この考え方は、確かにフィリップモリスとは異なります。なぜなら、フィリップモリスは事実上、紙巻たばこという選択肢をユーザーから排除しているからです。

「どちらが良いか」ということを一旦置き、客観的にこの事象を見ると、この選択の相違は今後数十年において、メーカーとしての企業価値にも、ユーザーとしての生活動態にも、大きな違いを生み出していくと思います。

JTの「特殊な」インターンシップ

話が少し脱線しますが、2020年のJTのインターンシップの募集要項をご存知でしょうか?

テーマはずばり「未来の嗜好品を創り出せ」というものでした。

2020年のJTのインターンシップ:「未来の嗜好品」をグループディスカッションで創り出していくことがテーマとなっていた。

2020年のJTのインターンシップ:「未来の嗜好品」をグループディスカッションで創り出していくことがテーマとなっていた。

このインターンシップの内容から見ても、JTはたばこのような嗜好品を様々と創り出し、それをユーザーに選択肢として提供したい意欲を感じます。

どちらの”タバコ戦略”が正しいのか

2つの戦略がある
  1. ユーザーの健康を第一に考えて、紙巻たばこから撤退する
  2. ユーザーの自由を尊重し、紙巻たばこの販売は続ける

どちらも、理にかなった選択です。しかし、この選択は簡単なように見えて、今後大きな変化を、メーカー会社だけでなく、私達消費者にももたらします。

ーでは、どちらの戦略が正しいのかー

これはまだ、わかりません。なぜなら、フィリップモリスもまだ発表したまでで、実行はしていないからです。正しいか否かはその実行の結果を見て初めてわかることです。しかし、この戦略が実行された際には、世の中が大きく変わると思います。

もはや”標準的”な加熱式たばこ

すでに日本市場において、加熱式たばこはもはや「標準」となっているとBATは語ります。喫煙者の4分の1が健康リスク低減の可能性を秘めた、加熱式たばこのような製品を利用しているからです。

日本において加熱式たばこはもはや標準的なものになっている(BATの記者会見資料より)

日本において加熱式たばこはもはや標準的なものになっている(BATの記者会見資料より)

今後、この流れが日本だけでなく、世界的にも広まるでしょう。

上述したどちらの選択をメーカーが取るかで、日々の景色は変わり、しかし一方でユーザーの選択肢が狭まる可能性もあります。

今回のBATの発表で、あらためて加熱式たばこの健康リスクの低減が科学的に証明されました。たばこの新しいカタチが、より一般化していく大きな発表となることは間違いありません。今後、たばこメーカー各社はより積極的に新しいカタチのソリューションを提示してくるでしょうし、それをユーザーは選択していくことになります。

どちらの戦略が正しいのか、選ぶのは消費者である私達自身ですし、その結果が社会に与える影響は小さいものではないでしょう。

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