こんにちわ、アイコスさんです。昨日「IQOS キット」本体が値下げされるというニュースをお伝えしました。
IQOSが価格改定!アイコス3デュオは3000円、マルチは2000円値引き【1月25日から】最新モデルである「アイコス3デュオ」は3000円、連続吸いモデルである「アイコス3マルチ」は2000円、メーカー希望小売価格(≒定価価格)を下げるという大きな価格改定です。
なぜ、「アイコス」はこのような価格改定を、今、行うことを決定したのでしょうか?「加熱式たばこのジレンマ」というワードに触れながら、これからの加熱式たばこ市場を占います。
アイコスの価格改定
あらためて2021年1月25日から適用されるアイコスの価格改定額を見てみましょう。
IQOSキット価格一覧(1月25日より)
製品名 | 旧定価 | 新定価 |
IQOS 3 DUO キット | 9,980円 | 6,980円 |
IQOS 3 DUO ホルダー | 4,480円 | 2,980円 |
IQOS 3 MULTI キット | 6,980円 | 4,980円 |
IQOS 3 キット | 8,980円 | 5,980円 |
IQOS 3 ホルダー | 2,980円 | 1.980円 |
IQOS 2.4 PLUS キット | 4,980円 | 2,980円 |
IQOS 2.4 PLUS ホルダー | 1,980円 | 1,980円(据え置き) |
新型モデルのみならず、旧モデルである「アイコス2.4プラス」も2,000円の値引きが実施されます。ちなみに「アイコス2.4プラス」は、2017年3月の発売時、定価10,980円でした。そこから考えると実に8,000円も割引されていることになります。
「古くなったから安くなる」わけではない
この「アイコス2.4プラス」だけを捉えて考えると、いわゆる型落ちモデルとして値下げが実施されたのかと思うかもしれません。しかし、安くなるのは最新モデルである「アイコス3デュオ」も同様です。
では、「アイコス3デュオ」よりも新型モデルが発売されるからでは?という疑念も出てきますが、すでに「IQOS 4」のような新しいモデルとしてIQOS Introduceの加熱式たばこである「lil HYBRID(リル ハイブリッド)」も発売されており、「アイコス3デュオ」が型落ちという程のものになるわけではなさそうです。
新型の「リル ハイブリッド」も価格は6,980円
現在、「リル ハイブリッド」は地域限定販売がされていますが、こちらの価格は「アイコス3デュオ」の価格改定後価格と同じ6,980円です。つまり、IQOS・lilシリーズの最も高い価格帯は6,980円になるということになります。
「リル ハイブリッド」の登場によって最高値の価格調整をした・・・という意味もきっとあるのでしょうが、しかし一番の影響は外部影響。具体的には競合との価格競争によるものが大きいです。
加熱式たばこデバイスの熾烈なシェア争い
現在、加熱式タバコ各社は熾烈なシェア獲得争いをしています。
加熱式タバコというデバイス性を鑑みると、「シェアの獲得(≒ 自社加熱式タバコデバイスを持っている人を増やす)」は各社にとって最も重要な指標になります。もしかすると、「iPhone vs Android」とかそういった次元よりも遥かに重要かもしれません。理由は3つ。
理由①:デバイスを持っていないとたばこを吸えない
まず第一に、加熱式たばこは、加熱式たばこデバイスを持っていないとたばこを吸うことができません。
当たり前の事ですが、例えばフィリップモリス社の「マールボロ ヒートスティック」を吸いたい場合、「アイコス」デバイスを持っていないと吸えないわけです。BAT社の「ケント」を吸いたい場合は「グロー」デバイスが必要で、JT社の「メビウス」を吸いたい場合は「プルーム」デバイスが必要です。
この当然が、加熱式たばこ各社を苦しめています。
なぜなら、紙巻きたばこではライター1つあればどのたばこ銘柄でも吸うことができたからです。つまり、会社間の壁は薄かった。ライター1つあれば、「マルボロ」も「ケント」も「メビウス」も好きな銘柄を吸うことが出来たのです。
しかし、これが加熱式たばこでは出来なくなっている。加熱式たばこの存在は、たばこ会社間の壁を厚くしました。
加熱式たばこは私達ユーザーに、煙という煩わしさからの解放と健康被害のリスク減少をもたらしてくれましたが、たばこ会社にとっては専用デバイスの存在から、半永久的なユーザー離反をもたらすことになるのです。これはまさに加熱式たばこのジレンマといえると思います。
たばこ会社から加熱式たばこを見た時、先進的で有益な効能があるからこそ売れるし使ってもらいたいが、もし他社デバイスだけしか持たなかったら実質的に自社ユーザーではなくなってしまう・・・たばこ会社各社はそのジレンマに苦しんでいます。だからこそ、シェア獲得争いが熾烈になっているのです。
理由②:利益はたばこ1箱から生まれる
上記のような加熱式たばこの特性から、もはや加熱式たばこデバイスを販売することでの利益を各社度外視し始めました。詳しくは後述しますが、2021年1月に発売されたBATの「グローハイパープラス」は定価が980円です。どう見たってデバイスの購入だけでは赤字の価格設定になっています。
加熱式たばこを展開する会社の利益は、デバイス購入の先のたばこ1箱の販売数に大きく左右されているのです。
理由③:タバコは継続購入するもの
そしてそれに輪をかけて大事なのが、たばこ購入は継続性のあるものという点です。たばこは当然成人だけが嗜むことができる「嗜好品」であり、ニコチンという成分が入っているため依存が発生します。
つまり、継続して買うものです。
そして、利益はたばこ1箱の販売数に関わります。
そして、加熱式たばこは専用デバイスを持っていないと吸うことができません。
もしも、「アイコス」がどんなに良い専用タバコを作ったとしても「アイコス」というデバイスをユーザーが持っていないと、吸えないし、その良いタバコを買ってもらえない。つまり、ユーザーが自社加熱式たばこデバイスを持っていない限り、収益が低迷し続けるだけの形になってしまうのです。
「加熱式たばこ」のユーザー数が拡大している今、自社のデバイスをユーザーに持っている状態にさせることがなにより重要になってきているのです。
加熱式たばこは値下げ合戦になっている
このようにして、たばこ会社各社が「自社加熱式たばこのシェア拡大」を目的と捉えた結果、今起こっているのが加熱式たばこデバイスの値下げ合戦です。
各社の高温加熱式たばこデバイスの、当初の定価と現在の価格を比較すると実にわかりやすい値下げが実施されています。
フィリップモリス:IQOSシリーズ
前述のとおり、「IQOS 2.4 Plus」は発売時10,980円だったのものが、2021年1月25日より2,980円になります。
BAT:gloシリーズ
初代「グロー」の定価価格は8,000円でした。そして2021年1月に発売された最新モデル「グローハイパープラス」は980円で購入することが可能です。
JT:Ploomシリーズ
初代「プルーム・エス」の定価は7,980円でした。2021年1月現在3,980円となっています。更に最新モデル「プルーム・テック・プラス・ウィズ」は2021年2月1日より1,000円割引キャンペーンも実施されます。
グローハイパープラスの衝撃
そして、アイコスの値下げにさらなる決定打を与えたのが、BATの加熱式たばこ「glo Hyper+(グローハイパープラス)」の登場かと思われます。
「グローハイパープラス」は、通常モードとブーストモード2つの加熱モードを備え、デザインのカスタマイズ性も高い、グローシリーズのハイエンドモデル。グローを使うのであれば文句ない設計になっているのですが、なんと初登場のメーカー希望小売価格が980円でした。どう考えても異常です。
もともと「グローハイパー」は割引キャンペーンを行っていましたが、それはあくまで定価3,980円の中でのキャンペーンでした。それが「グローハイパープラス」では定価が980円となったのです。
更に、最後のひと押しと言わんばかりに、1台買うと500円相当のたばこ1箱プレゼントというグローハイパープラス購入キャンペーンまで行っています。
グローハイパープラスを買うならおみくじ付き980円キャンペーンが圧倒的にお得冷静に比較すると、これまでの「アイコス3デュオ」の9,000円引きで買える加熱式たばこデバイスになります。流石に「アイコス」の性能が良いといっても、1万円近い価格差は消費者にとっては性能差では覆せない差があるといえます。
「加熱式たばこのジレンマ」は尋常じゃない
こういった加熱式たばこ市場の背景から、「アイコス」本体の値下げが決定されたと予想できます。
ここまで述べてきた通り、「加熱式たばこのジレンマ」とは、「たばこ」という性質だからこそ発生するものです。たばこ会社にとって、このジレンマと苦しみは尋常なものではありません。極端な話、紙巻きたばこが衰退し加熱式たばこだけになった世界では、このシェア獲得に負けた企業は、倒産まで追い込まれる可能性があります。
加熱式たばこは(紙巻きたばこと比べて)非常に有益なものだから勧めたいが、一度使ったら最後デバイスのスイッチングコストは非常に高く、他社にシェアを奪われた場合、会社の存続が危ぶまれる。よって利益を望めなくてもデバイスを値下げするが、各社が行うことで値下げ合戦となる・・・。シェア獲得期においては、たばこ会社は消耗するしかないのです。
どんな市場より苦しくなるパンドラの箱だった
対立構造としてスマートフォンの「iPhone vs Android(Apple vs Google)」という表現を前述しましたが、おそらくそんな市場よりも遥かに苦しいと思います。
こういったスマートフォンハードは、アプリなどのソフトウェアのプラットフォーム上で収益を生みますが、実質的にiPhoneでもAndroidでも同一アプリは開発されることが常です。例えば「iPhoneを持ったからYouTubeが見れない」なんてことは起こらない。
しかし、加熱式たばこは違います。「アイコスを持ったからメビウスを吸えない」んです。メビウス(JT)にとってこんな恐ろしいことはありません。おそらく加熱式たばこというデバイスが生まれるまでは、こんな危機に直面したことはなかったでしょう。
加熱式たばこデバイスを喫煙者が買うという行動は、ユーザーにとっては1つの選択ですが、たばこ会社にとってはこの選択は非常に重要な選択になります。
そう考えると、加熱式たばこはパンドラの箱だったとも言えるでしょう。たばこ会社自らが制限を強いているような格好になっているからです。
収束する可能性もある
しかし、そういった状態も市場競争の1つの結果といえます。
実は、私達が使っている携帯電話のNTTやau、ソフトバンクなど通信網でも同じような市場競争が発生していました。今この三社が通信会社として立っているのは、割とこれから加熱式たばこ市場で起きそうな独占(寡占)と、企業間競争の末の結果でもあります。
イメージとしては、NTTがフィリップモリスで、auがJTで、ソフトバンクがBATような形…(マーケティング脳)
こういった過去の事例を習うと、フィリップモリス、BAT、JTがもし統一の銘柄を作り出せたら、統一規格の加熱式たばこデバイスを作ることができたら・・・ここまでいったジレンマのような課題は解決される可能性があります。しかし、それは非常に困難で、更にどこかの会社が割を食う必要があります。
私達ユーザーからすると、こういったソリューションが出てくると、また新しいブレークスルーが発生する可能性があるので期待するところではありますが、まだ長くは各社の熾烈な市場競争が続いていくことでしょう。2021年も加熱式たばこから目が離せません。