昨日の台風、皆様大丈夫でしたでしょうか?
夜は本当に風と雨が凄かったですが、今朝散歩をしたら家の近所の被害は意外とそうでもなく、快晴で非常に気持ちよかった!ただ被害を合われた方も多くいらっしゃると思いますので、読者の皆様の無事をお祈りします。
さて、最近もっぱら仕事が忙しく、更新が久々になってしまいました。
この数日間で【電子たばこ界隈】に様々なことが起こっています。特にアメリカでの「VAPE販売停止」発表から割と本当に「電子たばこもうこれ駄目なんじゃないか?」くらいな勢いを感じているので、そのまとめをお届けします。
米国・中国・インドと販売禁止に
まず、ちょうど一ヶ月前、9月の中旬トランプ政権が公式に「電子たばこの販売を禁止」することを発表しました。
アメリカで「電子たばこ(VAPE)」が販売禁止|既に6名の死亡が確認当サイトでは9月13日に記事にしていますが、ここから電子たばこの規制が一気に開始されています。
直後9月18日には、米国だけでなく中国で電子タバコの一強「JUUL」の販売が中止との発表がありました。
電子タバコのJUUL、中国上陸も1週間で販売中止。米中貿易戦争が影響か(engadget)
その影響は米国・中国と続きインドにも波及。
インドが電子たばこを全面禁止へ 若年層への普及を警戒(日本経済新聞)
インドの全面禁止には明確に罰金規定までが施されています。
1回目の違反では最大で禁錮1年か10万ルピー(約15万円)の罰金、またはその両方が科される。2回目以降の違反に対しては最大で禁錮3年と50万ルピーの罰金とする。現在、商品在庫を持つ販売業者らには届け出たうえで最寄りの警察署に在庫を提出するよう義務づける。
その間に、米国内では州単位で販売禁止になっていたものが、ミシガン州、ニューヨーク州、ロードアイランド州、マサチューセッツ州…と規制が広がっています。
電子タバコの死亡者報告が増える
こういった規制ニュースと並行して、「電子タバコを利用したことでの死者数が増加」というニュースが報道されます。
9月20日時点では、電子タバコ関連の死亡者が8人になるとの報道が。
米、電子たばこ関連の死亡8人に。FDAが犯罪調査を開始(mashupNY)
そして10月10日、その被害は増え続け「死亡例は26件に増加」との報道がありました。
米の電子たばこ関連疑われる死亡例、26件に増加 症例も1299件(ロイター)
9月末時点では死亡例は8人、10月初週では18人、10月10日で26人…と、続々と被害報告が上がっているのが現状です。
被害について調査開始
これを受けて、米FDAは「電子タバコ用リキッドに関する調査」を開始しています。
米FDA、電子タバコ用リキッドに関する調査を開始。流通状況から肺疾患急増の原因を探る
影響を受けた人の中にはTHCが含まれる者を使用した人がいれば、ニコチン入りのもの、さらにはTHCとニコチンを同時に使用したひとまでいる模様。一部の人は正規に流通しているものではない製品を使用していました。
例えば、電子タバコを利用した人の中でも、ニコチン入りのものやTHC(大麻)入りのものを利用した上で疾患が発生しているパターンが多くあるそうで、その実態を調べる調査が始まっています。
なお、日本で販売されている電子タバコは「ニコチン」も、もちろん「大麻」入りのものも販売は禁止されているので、日本と海外では少し状況が違うのが正しい認識となります。
ニューヨーク州では初めての死者が確認された際に、州知事が電子タバコについて極めて強い非難を行い、米国内では「電子タバコ大論争」が繰り広げられています。
クオモ州知事は会見で「電子たばこは公衆衛生の危機だ。若者に影響を及ぼし、若者をターゲットにしている。連邦政府が早急に対策を取る必要がある、大統領が行動すべきだ。その前に何人死ぬか分からない。」と政府に対応を求めた。
NY州 電子たばこで初めての死者。ブロンクスで17歳が死亡(mashupNY)
繰り広げられる電子たばこ論争
死者が増える中、電子たばこは安全なのか利用をしていいのか悪いのか、米国内で大論争が起こっています。
米国で広がる、電子たばこ論争(ロイター)
上記ロイター記事ではビデオでわかりやすく解説されていますが、少し引用するとその強烈な論争具合がわかると思います。
※画像はいずれもロイタービデオから引用。
「米国内で被害が出るのでれば、政府としての規制を求める」
という声と、
「電子たばこを規制すると、害の強い紙巻きたばこ利用者が増えて逆に健康悪化が加速する」
という声、双方の意見が対立しています。
大手小売チェーンが販売停止
これに伴い、米国内の大手小売チェーンが相次いで電子たばこの販売を停止しています。
- ウォルマート、電子たばこ販売を中止-関連した死亡報告が相次ぐ(Bloomberg)
- 米クローガーとウォルグリーンズ、電子たばこ販売中止へ(ロイター)
- 中国アリババ、米国内で電子たばこ関連部品の販売を中止(ロイター)
日本でも有名な「ウォルマート」、スーパーの「クローガー」、ドラッグストアチェーンの「ウォルグリーンズ」も販売停止。
また中国最大手通販サイト「アリババ」も、米国内での電子たばこ販売を停止することを発表しました。
この背景には、政府として販売を停止したこともありますが、訴訟リスクを回避する側面もありそう。
- 米NY市、電子たばこ通販22社を提訴 未成年者への販売で(ロイター)
- 電子タバコ歴1年半の18歳男性、肺年齢が70歳に!メーカーと販売店を提訴(BIGLOBE)
大手電子たばこメーカーのジュール・ラブズや、同社の親会社でマルボロのメーカーであるアルトリア・グループ(MO.N)を相手取り、若い成人と10代の若者の親が起こす訴訟の数が増加している。
様々な問題が出た影響で、販売停止がどんどん加速しています。
当然、VAPE利用者数は大幅に減っており、電子たばこメーカーは大打撃を受けています。
電子たばこメーカーの経営危機
この状況に電子タバコメーカーは、まさに経営危機へと陥っています。
電子タバコ「ジュール」の企業価値が急落、昨年の3分の2に(Forbes)
ジュールの出資元のヘッジファンドDarsana Capital Partnersは先日、同社の企業価値を240億ドル(約2.6兆円)に引き下げたとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。ジュールの企業価値は今年の初めには380億ドルとされていた。
日本円にすると、4.1兆円の企業価値だった会社が、1年足らずで2.6兆円の会社になってしまったわけです。
つまり1.5兆円もの価値がこの一年で失われたことになります。
この企業価値の低下を受けて、JUULのCEO(社長)は9月末に辞任しています。
米電子たばこジュールのCEO辞任 逆風の中、経営刷新(日本経済新聞)
ここで少し「JUUL」という会社を知らない方ののために少し紹介すると、ジュールは電子タバコ業界で最大手の企業です。
VAPE(電子タバコ) = JUUL
というくらいの知名度で、例えば「juuling(ジューリング」という言葉が生まれるほどに米国の若者中心に大ヒットしたVAPEです。
その会社がここまでの衰退をするとは、つい数ヶ月前まで誰も想像だにしていませんでした。
それを象徴するのが、この8月25日付けのニュース。
米たばこ大手フィリップモリスとアルトリア 合併を協議(日本経済新聞)
2019年8月末、フィリップモリスとアルトリアは合併を協議していたのです。
フィリップモリスといえば、日本でもおなじみのタバコ会社。「マルボロ」ブランドや「アイコス(IQOS)」のメーカーとして有名です。
そしてもう一つの「アルトリア」とは、「ジュール」の親企業であり、フィリップ・モリスとアルトリアは元々1つの企業でした。
もし、この企業合併が完了したら”企業価値2千億ドル(約21兆円)の巨大たばこ企業が生まれる”ことになり、更にフィリップモリス…つまり”「IQOS」ブランドから電子タバコ(VAPE)が誕生するのではないか”と、大きな期待が寄せられており、その結果
米株式市場でアルトリア株は一時11%高
という大きな変化まで生まれていました。
が、しかし、今回まとめているこの騒動です。
合併の話は1ヶ月足らずで頓挫となりました。
フィリップ・モリスとアルトリア、合併協議を終了(Bloomberg)
まさに、「まさか」という事態だったと思います。それまで電子タバコ(VAPE)は「害が少ないタバコ」として期待が寄せられていたのに、この短期間で一気に形勢が変わりました。
加熱式タバコ「アイコス(IQOS)」の行方
ここで少し注目なのが、フィリップ・モリスの株価は上昇したということです。
米フィリップ・モリス株が大幅高 合併協議中止で(日本経済新聞)
理由としては、そもそも合併の中に不利益なものがあったというものがありますが、「今回の騒動での”悪”は電子タバコにある市場評価された」という側面も大きいと見られます。
合併協議中止の上で、フィリップ・モリスCEOはアイコスの立ち上げに注力していくとの旨の発表をしています。
フィリップ・モリスのアンドレ・カランザポラス最高経営責任者(CEO)は25日に声明を発表し、「協議を重ねた結果、煙のない未来を実現するという共通の関心の一環として、両社は米国での(加熱式たばこの)アイコス(iQOS)の立ち上げに注力していくことで合意した」と述べた。
「電子タバコと加熱式タバコは違うもの」として、市場からもメーカー内でも判断されており、今後は米国内でもより一層アイコスはじめ加熱式タバコにユーザーが寄っていくことが予想されます。
1ヶ月の電子タバコ大騒動、そして日本は
ここまでで、ざっくりとこの1ヶ月の電子タバコ騒動をまとめ終わります。
VAPE利用での死者が急増したことから、米国内では”その存在自体”の大論争まで発展しています。
既に販売が停止され、VAPE利用者は減っていますが、今後も大幅に減っていくでしょう。
一方で、”電子タバコ問題の本質的な解決”は何なのかという問題も出ています。
米国で問題になった電子タバコは、ただのフレーバー付きVAPEというだけでなく「大麻入り」のものや「ニコチン入り」のものが利用された結果、ここまでの死者が報告されたという側面もあります。
日本では、
- ニコチン電子タバコ
- 大麻入り電子タバコ
は、もちろん禁止されており、相当に問題点が異なります。
しかし、「電子タバコ=悪」というイメージは今回の一連の報道でより強化されたので、何が入っていようが「電子タバコ」というだけで「危険なもの」との認識が、広く大衆が抱くイメージとして持たれることでしょう。
この”イメージ”は今後の電子タバコや加熱式タバコ展開に大きく影響を与えると思います。
今現在、これら電子タバコの騒動を受けて、「日本政府はこうする」といった公表はされていません。
電子タバコと加熱式タバコは違うものですが、もしかしたらこのまま加熱式タバコへの規制なども起こるかも…しれません。
ただ単に海外からの影響というだけでなく、最適な研究・調査を行った上で、私達消費者は何を信じれば良いのか、メーカー・政府問わず公表して頂きたいと願うばかりです。
この騒動は、この一ヶ月で終わらずに様々な報道がされると思うので、すこしわかりづらいこの「電子タバコ騒動」を引き続きお伝えしていきます。